「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
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 私、セラフィーナ・シャノンは、シャノン公爵家の三女として生まれた。

 シャノン公爵家は、代々精霊に愛されていることで有名な一族だ。

 このサフェリア王国は、精霊が多く暮らす国として有名で、建国当初から精霊の加護を受けて発展してきた。

 小国ながらも豊かで平和な暮らしが出来るのは、全て精霊のおかげだ。


 そのような国なので、精霊に愛され、精霊と契約することで望みを叶えてもらえる力を持つシャノン一族は、王国全体から尊敬を集めていた。

 お父様もお母様も王国にごくわずかしかいない高位精霊と契約していて、日照りの時に雨を降らすよう頼んだり、他国からの侵略を食い止めてもらったりしている。

 両親の力を受け継いだ上二人のお姉様は幼い頃から精霊を見られるようになり、それぞれ六歳のとき「精霊の丘」で高位精霊と契約した。


 しかし、シャノン公爵家の中で私だけが精霊を操る才能に恵まれなかった。

 私が生まれたときは、みんな当然精霊師としての力を持っているだろうと期待していたらしい。しかし、私はなかなか精霊を見られるようにならなかった。

 シャノン家に生まれた子供は、生まれたばかりの頃は精霊の姿を見られないが、少し成長するとその姿を認識できるようになる。

 姉二人は三歳にもならないうちから精霊の姿を目に留め、一緒に遊ぶようになった。


 しかし、私が精霊の姿をうっすらと認識できるようになったのは、六歳の頃。それも姉二人のようにはっきり見ることは出来ず、ぼんやりと存在を確認できるだけだった。

 その上、私はあまり精霊に好かれないようで、ぼんやりとした光に近づこうとするたびに逃げられてしまう。姉たちのように精霊と仲良くなるなんて夢のまた夢だった。

 出来損ないの娘に対して、両親も二人の姉も冷たい視線を送った。

 それでも、あの頃はまだ、これからの成長にわずかながらにも期待があったのだと思う。


 決定的に見限られたのは七歳で「精霊の丘」を訪れたときだ。

 シャノン一族の人間は、七歳になると領地の北にある「精霊の丘」という場所に行き、自分だけの精霊と契約することになっている。

 精霊の丘は神域と呼ばれる場所で、精霊がたくさん住んでおり、彼らに気に入られれば契約してもらえるのだ。

 家族は皆高位精霊と契約していたが、未だに精霊をうっすらとしか見られない私が高位精霊と契約するのは無理だろうと諦められていた。

 うんざりした顔をしながらもつき合ってくれた両親に連れられ、私は精霊の丘に入る。


 しかし、私はそこで一匹の精霊とも契約出来なかった。

 うっすら見える精霊の後を追うと、みんな逃げていってしまう。

 お屋敷で見かけた精霊も私の姿を見ると逃げてしまったので、予想していないわけではなかった。

 けれど、たくさんの精霊の集まるこの場所ならば、一匹くらい私と仲良くなってくれるんじゃないかなんて、甘いことを考えていた。

 
 私は泣きそうになりながら精霊を追いかけ、どうか私と契約してくださいと頼んでみたけれど、私の元へ来てくれる精霊はいなかった。

 私はとぼとぼと両親の待つ丘の下まで降りた。

 私が強い精霊と契約できるとまでは思っていなかった両親も、まさか一匹も相手にしてもらえないとは思わなかったようで、失望を隠さない表情をされた。
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