「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「ルークさん、今のは……」
「一時的に体を軽くする魔法を使ったんだ。それよりセラちゃん、早く逃げよう! すぐに兵士たちに追いつかれる」
「は、はい……!」
ルークさんは私を下ろすと、手を引いて町を駆けて行く。
後ろから兵士たちの呼び止める声がする。その中に混じってエリオット様の声も聞こえてきた。
「セラフィーナ!! 何をしている!! 戻ってこい!!」
エリオット様が呼んでいる。しかし私は足を止められなかった。
自分の感情すらわからないまま、私はただ走ることしか出来ない。
『やるじゃん、ルーク。セラ、このままエリオットから逃げちゃおうよ!』
肩口からシリウスが楽しそうにそう言った。
私はシリウスの言葉に答えることが出来ない。
私はどうしてエリオット様から逃げているのだろう。私が王国から出てきたのは、エリオット様に迷惑をかけないためだった。
その彼が戻って来いと言っているのだから、もう逃げる必要などないはずだ。
なのに、どうしても止まる気になれない。
「セラちゃんは、絶対もっと幸せに生きていいはずだよ」
私の前を走るルークさんが、息を切らしながらそう言った。
彼の言っていることがよくわからなかった。
私はサフェリア王国でも幸せだったはずだ。公爵家での生活はひどいものだったけれど、王宮に連れて来られてからは自分には過ぎた待遇を受けてきたと思っている。
そう思っているはずなのに、どうしてかルークさんの言葉が胸に響いて仕方なかった。
気づかないうちに涙が頬を流れ落ちて、私は足を止めないまま慌てて涙を拭った。
***
町を随分長い間走り通し、人気のない建物の裏まで辿りついた。
「とりあえず撒けたかな……」
ルークさんは息を切らしながら言う。
長時間走り続けた私は、息も絶え絶えにしゃがみ込んだ。
「セラちゃん大丈夫? ここに隠れて少し休もうか」
「は、はい……」
ルークさんが心配そうにそう言ってくれる。私はどうにか返事をした。
建物の裏に隠れている間も、私はなんだか落ち着かなかった。こんなことをして本当に良かったのかという思いが消えない。
逃げ出してしまってよかったのだろうか。
「セラちゃん、サフェリア王国でのこともっと教えてよ。エリオット様、セラちゃんを追って来たんだよね? でもあの人、婚約者のセラちゃんを差し置いて別の精霊師を婚約者にしたいなんて言ったんだ」
しゃがみ込む私に、ルークさんは真剣な顔で尋ねてくる。
「そう……なのですが、さっきも言った通りアメリア様は私なんかよりもずっと才気に溢れた方で」
「そういえば、前にエリオット様のそばには私よりずっと才能に溢れた方がいるみたいなこと言ってたね。それがアメリア?」
「はい……」
「そのアメリアって人のこと詳しく教えてくれない? セラちゃんより才能がある精霊師って一体何者?」
ルークさんは眉間に皺を寄せて尋ねてくる。
私はアメリア様について説明した。
「一時的に体を軽くする魔法を使ったんだ。それよりセラちゃん、早く逃げよう! すぐに兵士たちに追いつかれる」
「は、はい……!」
ルークさんは私を下ろすと、手を引いて町を駆けて行く。
後ろから兵士たちの呼び止める声がする。その中に混じってエリオット様の声も聞こえてきた。
「セラフィーナ!! 何をしている!! 戻ってこい!!」
エリオット様が呼んでいる。しかし私は足を止められなかった。
自分の感情すらわからないまま、私はただ走ることしか出来ない。
『やるじゃん、ルーク。セラ、このままエリオットから逃げちゃおうよ!』
肩口からシリウスが楽しそうにそう言った。
私はシリウスの言葉に答えることが出来ない。
私はどうしてエリオット様から逃げているのだろう。私が王国から出てきたのは、エリオット様に迷惑をかけないためだった。
その彼が戻って来いと言っているのだから、もう逃げる必要などないはずだ。
なのに、どうしても止まる気になれない。
「セラちゃんは、絶対もっと幸せに生きていいはずだよ」
私の前を走るルークさんが、息を切らしながらそう言った。
彼の言っていることがよくわからなかった。
私はサフェリア王国でも幸せだったはずだ。公爵家での生活はひどいものだったけれど、王宮に連れて来られてからは自分には過ぎた待遇を受けてきたと思っている。
そう思っているはずなのに、どうしてかルークさんの言葉が胸に響いて仕方なかった。
気づかないうちに涙が頬を流れ落ちて、私は足を止めないまま慌てて涙を拭った。
***
町を随分長い間走り通し、人気のない建物の裏まで辿りついた。
「とりあえず撒けたかな……」
ルークさんは息を切らしながら言う。
長時間走り続けた私は、息も絶え絶えにしゃがみ込んだ。
「セラちゃん大丈夫? ここに隠れて少し休もうか」
「は、はい……」
ルークさんが心配そうにそう言ってくれる。私はどうにか返事をした。
建物の裏に隠れている間も、私はなんだか落ち着かなかった。こんなことをして本当に良かったのかという思いが消えない。
逃げ出してしまってよかったのだろうか。
「セラちゃん、サフェリア王国でのこともっと教えてよ。エリオット様、セラちゃんを追って来たんだよね? でもあの人、婚約者のセラちゃんを差し置いて別の精霊師を婚約者にしたいなんて言ったんだ」
しゃがみ込む私に、ルークさんは真剣な顔で尋ねてくる。
「そう……なのですが、さっきも言った通りアメリア様は私なんかよりもずっと才気に溢れた方で」
「そういえば、前にエリオット様のそばには私よりずっと才能に溢れた方がいるみたいなこと言ってたね。それがアメリア?」
「はい……」
「そのアメリアって人のこと詳しく教えてくれない? セラちゃんより才能がある精霊師って一体何者?」
ルークさんは眉間に皺を寄せて尋ねてくる。
私はアメリア様について説明した。