「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「アメリア様は、精霊を自在に操れる方なんです。火も水も風も土も、全ての属性に適性がありました。魔力自体もすごく強いんです。アメリア様が力を送れば、干上がった川に一瞬で水が溢れ、何もない荒れ地に森が出来ました」

「……一瞬で川や森を?」

 ルークさんが怪訝な顔になる。不思議に思いながらも説明を続けた。

「はい。国民たちからは大変感謝されていました」

「その人精霊師なんだよね? 精霊の力を使ってそういう奇跡みたいな結果を残してるってこと?」

「はい、アメリア様は精霊をとてもうまく操れたので」

「それ、ちょっと危険なんじゃないかな」

 ルークさんは固い声でそう言った。危険という言葉の意味がわからず、私は首を傾げる。


「どういうことですか?」

「俺は精霊師じゃないから教わった知識でしかないけど。精霊がそういう物質的な加護を与えるには、もっと長い時間がかかるはずなんだ。瘴気を祓うのとはわけが違う。無理をすれば出来ないこともないらしいけど、精霊にかかる負担が大きすぎるし、せっかく精霊によって作られた川や森も短期間で消え去っちゃうって聞いた」

「え……? で、でも、アメリア様の作った川や森は、少なくとも二年ほど経っても消えていませんでしたよ?」

「そんなはずないと思うんだけどな……。全然綻びもないの?」

「はい。アメリア様が奇跡を起こす場所は、偶然にも私が力を送っている場所と同じだったのでよく見ていましたが、何も起こりませんでした」

「え?」

 ルークさんは驚いたように目を見開く。それから戸惑った声で尋ねてきた。


「すでにセラちゃんが力を送ってる場所に、どうしてわざわざアメリアが?」

「私の力では効果があまりに弱いので、アメリア様が強い力を使って早急に問題を解決してくださったんです。アメリア様はそれでも私のことも気遣ってくれて、あなたの力も必要なので変わらず力を送り続けてくださいねって言ってくれて……」

 ルークさんの顔が引きつっていく。

 それからしばらく頭を抱えていたルークさんが、強張った声で言った。


「セラちゃん、それ、アメリアの力じゃないかも……」

「どういうことですか?」

「多分、それセラちゃんの力に依存して功績を乗っ取ってる……」

 ルークさんはあくまで予想だけど、と前置きして話しはじめた。


 アメリア様には、精霊に一時的に大きな力を送る能力があるのではないかと。

 しかし、あくまで一時的な力に過ぎないので、もともと私が力を送って来た場所の中からこれから豊かになるはずの場所をあえて選び、わざわざパフォーマンスをしていたのではないかと。

 私がいなくなった今、アメリア様によって作られた川や森が維持出来ているのかわからないとルークさんは言った。


「そんなことあるでしょうか……。アメリア様はみんなに慕われているお優しい聖女様なのに……。私に対してもいつもにこやかで……」

「そこもちょっと疑問なんだけどさ、お優しい聖女様が婚約者のいる王子様に近づいて、セラちゃんが疎まれているのを放っておいたりする? セラちゃん騙されてない?」

 ルークさんは遠慮がちに尋ねてくる。

 シリウスが私の肩からルークさんの肩に飛び乗って言った。
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