「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「え、待ってセラちゃん! エリオット様の言うことなんて気にすることないよ!? うちの陛下、人使いは荒いけど事情も聴かずに人のこと誘拐犯扱いするような人じゃないし!!」
ルークさんは慌てた様子でそう言ってくれる。
陛下と普段から関りがあるらしいルークさんがそう言うのなら、そうなのかもしれない。
しかし、隣国の王太子から次期王太子妃を攫ったなんて言われて、何の悪影響も出ないとは思えなかった。
「セラちゃん、本当に……」
「違うんです。ルークさん。私本当は国に帰りたかったんです。帝国での生活が少し惜しくなってつい逃げてしまいましたが、やっぱり生まれ育った場所ですもの。王国で生きたいですわ。帝国はいい場所だと思いますが、ずっといたいとまでは思えません」
笑顔で言うと、ルークさんは戸惑うような顔になる。
「セラちゃん、それは本心?」
「はい。私、本当はエリオット様の元へ帰りたかったんです」
シリウスが肩口で不満そうに声を上げる。私はシリウスの頭を撫でた後、笑みを作った。
「ルークさん、短い間でしたがありがとうございました」
迷いを感じさせないようにはっきりそう言うと、ルークさんは何か言いかけた。それから少し悲しそうに口を噤む。
「……そっか。セラちゃんが帰りたいんなら仕方ないね」
しばらくの間を置いて、ルークさんは寂しそうにそう言った。私はなんだか胸が痛くて仕方なくなる。
それでももやもやする気持ちをどうにか振り切った。
私はルークさんに背を向けて、エリオット様の方に駆けて行く。
エリオット様は私が戻って来ると顔を綻ばせた。
「セラ、わかってくれたんだな」
「……はい。馬鹿なことをして申し訳ありませんでした」
「いいんだ。早く王国へ帰ろう」
エリオット様に手を差し出され、私はどうにか笑みを作ってその手に自分の手を重ねる。
私の肩で、シリウスが本当にいいのかと騒いでいた。私は何も言わないでと言う代わりに、開いているほうの手でシリウスを撫でる。
ルークさんの方は振り返らないまま、私はエリオット様に手を引かれて彼が乗って来たと言う馬車まで歩いた。
たくさんの兵士に囲まれながら、馬車に乗せられる。
隣に乗り込んだエリオット様は、嬉しそうな顔で私を見ていた。
「セラ、本当に見つかってよかったよ。お前が遺書なんて残していなくなるから気が気ではなかったんだぞ」
「ご心配おかけしてごめんなさい、エリオット様」
「もうあんな真似はしないでくれよ」
エリオット様は私の肩を抱き寄せてそう言った。どうしてだか心が冷えていくのを感じる。
馬車がゆっくり動き出す。
ティエルの町の景色がしだいに遠ざかっていった。
私はどうにもできない喪失感を抱えたまま、ただ流れていく景色を眺めているしかなかった。
ルークさんは慌てた様子でそう言ってくれる。
陛下と普段から関りがあるらしいルークさんがそう言うのなら、そうなのかもしれない。
しかし、隣国の王太子から次期王太子妃を攫ったなんて言われて、何の悪影響も出ないとは思えなかった。
「セラちゃん、本当に……」
「違うんです。ルークさん。私本当は国に帰りたかったんです。帝国での生活が少し惜しくなってつい逃げてしまいましたが、やっぱり生まれ育った場所ですもの。王国で生きたいですわ。帝国はいい場所だと思いますが、ずっといたいとまでは思えません」
笑顔で言うと、ルークさんは戸惑うような顔になる。
「セラちゃん、それは本心?」
「はい。私、本当はエリオット様の元へ帰りたかったんです」
シリウスが肩口で不満そうに声を上げる。私はシリウスの頭を撫でた後、笑みを作った。
「ルークさん、短い間でしたがありがとうございました」
迷いを感じさせないようにはっきりそう言うと、ルークさんは何か言いかけた。それから少し悲しそうに口を噤む。
「……そっか。セラちゃんが帰りたいんなら仕方ないね」
しばらくの間を置いて、ルークさんは寂しそうにそう言った。私はなんだか胸が痛くて仕方なくなる。
それでももやもやする気持ちをどうにか振り切った。
私はルークさんに背を向けて、エリオット様の方に駆けて行く。
エリオット様は私が戻って来ると顔を綻ばせた。
「セラ、わかってくれたんだな」
「……はい。馬鹿なことをして申し訳ありませんでした」
「いいんだ。早く王国へ帰ろう」
エリオット様に手を差し出され、私はどうにか笑みを作ってその手に自分の手を重ねる。
私の肩で、シリウスが本当にいいのかと騒いでいた。私は何も言わないでと言う代わりに、開いているほうの手でシリウスを撫でる。
ルークさんの方は振り返らないまま、私はエリオット様に手を引かれて彼が乗って来たと言う馬車まで歩いた。
たくさんの兵士に囲まれながら、馬車に乗せられる。
隣に乗り込んだエリオット様は、嬉しそうな顔で私を見ていた。
「セラ、本当に見つかってよかったよ。お前が遺書なんて残していなくなるから気が気ではなかったんだぞ」
「ご心配おかけしてごめんなさい、エリオット様」
「もうあんな真似はしないでくれよ」
エリオット様は私の肩を抱き寄せてそう言った。どうしてだか心が冷えていくのを感じる。
馬車がゆっくり動き出す。
ティエルの町の景色がしだいに遠ざかっていった。
私はどうにもできない喪失感を抱えたまま、ただ流れていく景色を眺めているしかなかった。