「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
12.違和感 エリオット視点
ラピシェル帝国から出て数日間馬車に揺られ、ようやくサフェリア王国にセラを連れて帰ってくることが出来た。
現在、俺は本宮殿の一室でセラと向かい合っている。
久しぶりに見るセラは、想像していたようなやつれた姿をしておらず、むしろ肌も髪も艶やかで健康そうだった。
聞けば、セラは国境沿いの町であのルークとかいう魔術師と瘴気を浄化して回っていたという。逃亡中の住むところも食べ物も、全て魔術師団が用意していたのだそうだ。
俺をここまで心配させておいてそれなりに楽しくやっていたらしいことが大変不満ではあったが、セラの顔を見たらどうでもよくなってしまった。
長い銀色の髪に、美しい瑠璃色の目。目の前にいるのは疑いようもなくずっと探してきたセラフィーナだ。
「セラ、よく戻って来てくれた」
「エリオット様……」
微笑んでそう言うと、セラは戸惑うような表情でこちらを見た。
セラの反応に首を傾げる。ラピシェル帝国で再会してからのセラは、どうも様子がおかしい。
今までのセラなら、俺が少し声をかけてやるだけで喜び、気まぐれに頭を撫でてやればうっとりと目を細めたのに。
目の前にいるセラは困惑するばかりでちっとも嬉しそうにしない。
「エリオット様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「いや、いい。俺も言い過ぎた」
「エリオット様のご迷惑になりたくなかったんです。私がいたらアメリア様と結婚できないと……。だから私が自殺したことにすれば、お二人は誰に咎められることなく結婚出来ると思って、あんな大それた真似をしてしまいました」
セラは目を伏せながら申し訳なさそうに言う。
それを聞いて、俺はすっかり嬉しくなってしまった。
やはりセラは俺が嫌になって逃げだしたわけではないのだ。
ただ俺がアメリアのことが好きなのだと誤解したせいで、早まってあんな真似をしただけで。
俺はセラを安心させるために言ってやった。
「アメリアのことは気にするな。俺は最初からあんな女など好きでもなんでもない」
「え……っ? で、でも、前に私がいなければアメリア様を正式な婚約者に出来るのにおっしゃっていませんでしたか……?」
「あんなの全て嘘だ。セラがあんまり俺とアメリアのことを何とも思ってもなさそうだから、つい心にもないことを口走ってしまっただけなんだ」
「そうなのですか……?」
セラは理解出来ないというように不思議そうな顔をしていた。
いつもセラの肩に乗っている光の玉(俺にはうっすらとしか見えないが、これがセラの契約した精霊らしい)が威嚇するように跳ねているのが見える。
精霊が怒っていようがいまいがどうでもいいが、アメリアのことは何とも思っていないと伝えたのにあまり嬉しそうには見えないセラの反応が気になった。
俺は違和感には気づかないふりをして、明るい顔を作って尋ねる。
現在、俺は本宮殿の一室でセラと向かい合っている。
久しぶりに見るセラは、想像していたようなやつれた姿をしておらず、むしろ肌も髪も艶やかで健康そうだった。
聞けば、セラは国境沿いの町であのルークとかいう魔術師と瘴気を浄化して回っていたという。逃亡中の住むところも食べ物も、全て魔術師団が用意していたのだそうだ。
俺をここまで心配させておいてそれなりに楽しくやっていたらしいことが大変不満ではあったが、セラの顔を見たらどうでもよくなってしまった。
長い銀色の髪に、美しい瑠璃色の目。目の前にいるのは疑いようもなくずっと探してきたセラフィーナだ。
「セラ、よく戻って来てくれた」
「エリオット様……」
微笑んでそう言うと、セラは戸惑うような表情でこちらを見た。
セラの反応に首を傾げる。ラピシェル帝国で再会してからのセラは、どうも様子がおかしい。
今までのセラなら、俺が少し声をかけてやるだけで喜び、気まぐれに頭を撫でてやればうっとりと目を細めたのに。
目の前にいるセラは困惑するばかりでちっとも嬉しそうにしない。
「エリオット様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「いや、いい。俺も言い過ぎた」
「エリオット様のご迷惑になりたくなかったんです。私がいたらアメリア様と結婚できないと……。だから私が自殺したことにすれば、お二人は誰に咎められることなく結婚出来ると思って、あんな大それた真似をしてしまいました」
セラは目を伏せながら申し訳なさそうに言う。
それを聞いて、俺はすっかり嬉しくなってしまった。
やはりセラは俺が嫌になって逃げだしたわけではないのだ。
ただ俺がアメリアのことが好きなのだと誤解したせいで、早まってあんな真似をしただけで。
俺はセラを安心させるために言ってやった。
「アメリアのことは気にするな。俺は最初からあんな女など好きでもなんでもない」
「え……っ? で、でも、前に私がいなければアメリア様を正式な婚約者に出来るのにおっしゃっていませんでしたか……?」
「あんなの全て嘘だ。セラがあんまり俺とアメリアのことを何とも思ってもなさそうだから、つい心にもないことを口走ってしまっただけなんだ」
「そうなのですか……?」
セラは理解出来ないというように不思議そうな顔をしていた。
いつもセラの肩に乗っている光の玉(俺にはうっすらとしか見えないが、これがセラの契約した精霊らしい)が威嚇するように跳ねているのが見える。
精霊が怒っていようがいまいがどうでもいいが、アメリアのことは何とも思っていないと伝えたのにあまり嬉しそうには見えないセラの反応が気になった。
俺は違和感には気づかないふりをして、明るい顔を作って尋ねる。