「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています
「帝国の瘴気の浄化がまだ全然終わっていないんです。ルークさんによると、帝国には精霊が減ったことにより瘴気が増えてしまった場所がたくさんあるらしくて。私がいた二つの町ですらまだ精霊が戻り切ったとはいえない状態でした。ですから、帝国の状態がよくなるまでもう少しあそこにいたいと……」
「何を言っている。セラはラピシェル帝国ではなくサフェリア王国の人間だろう?」
「ですが、帝国にもう少し精霊が戻るまでの間だけでも……!」
「断る。だいたい、精霊もろくに操れない精霊師のお前が帰国したくらいでどうして帝国にそこまでの影響が出ると言うんだ。お前の仲間だった魔術師たちでどうにかするだろう」
セラがあまりに熱心に言うので、ついそんな言葉が口をついて出た。
……今のは言い方を間違えたかもしれない。
セラの顔を見ると、彼女は傷ついたような顔でこちらを見ていた。
「違うんだ、セラ。セラは瘴気が立ち込めているような危険な場所に行く必要はないと言いたかったんだ。そういうことは専門の魔術師たちに任せておけばいい」
「エリオット様……」
「セラは精霊を操れないままでいい。シャノン公爵家の令嬢が王太子の婚約者でいてくれれば、それだけで国が安定するんだ」
取り繕うようにそう言うと、セラはぎこちない笑みを返してくる。
「……そうですね。私はサフェリア王国にいるのが一番いいのですよね……」
「そうだ。お前は帝国になんか行かず、ずっとここにいればいいんだ」
「わかりました。エリオット様の仰せのままに」
セラはにっこり微笑んでそう言った。
ひとまずは納得してくれたようなのでほっと胸を撫で下ろす。
「わかってくれてよかったよ。そうだ、セラ。お前の部屋を別邸から本宮殿に移す準備をしないとな。つまらない意地からあんな場所に住まわせて悪かった」
「私は別邸でも十分でしたよ?」
「いや、すぐに準備をさせる。アメリアが本宮殿にいて、お前が別邸にいるという状況はどう考えても歪つだ」
その歪つな状況をこれまで許して来たのはほかでもない俺自身なのだが、今は一刻でも早くどうにかしたかった。
セラは曖昧にうなずく。
セラの肩の光の玉はどう見ても暴れてこちらを威嚇しているように見えたが、そんなことはどうでもよかった。
セラの頭を軽く撫でてから立ち上がる。早く部屋を移す準備を始めなければならない。
「エリオット様は、今も私のことを見てはくれないんですね……」
部屋を出ようと扉に手をかけたら、後ろから消え入りそうな声が聞こえてきた。俺は振り返って尋ねる。
「……どういう意味だ?」
「いえ、なんでもありません。お心遣い痛み入ります」
セラは笑ってそう言った。
しかし表情は笑っていても、その顔はちっとも嬉しそうには見えなかった。
「何を言っている。セラはラピシェル帝国ではなくサフェリア王国の人間だろう?」
「ですが、帝国にもう少し精霊が戻るまでの間だけでも……!」
「断る。だいたい、精霊もろくに操れない精霊師のお前が帰国したくらいでどうして帝国にそこまでの影響が出ると言うんだ。お前の仲間だった魔術師たちでどうにかするだろう」
セラがあまりに熱心に言うので、ついそんな言葉が口をついて出た。
……今のは言い方を間違えたかもしれない。
セラの顔を見ると、彼女は傷ついたような顔でこちらを見ていた。
「違うんだ、セラ。セラは瘴気が立ち込めているような危険な場所に行く必要はないと言いたかったんだ。そういうことは専門の魔術師たちに任せておけばいい」
「エリオット様……」
「セラは精霊を操れないままでいい。シャノン公爵家の令嬢が王太子の婚約者でいてくれれば、それだけで国が安定するんだ」
取り繕うようにそう言うと、セラはぎこちない笑みを返してくる。
「……そうですね。私はサフェリア王国にいるのが一番いいのですよね……」
「そうだ。お前は帝国になんか行かず、ずっとここにいればいいんだ」
「わかりました。エリオット様の仰せのままに」
セラはにっこり微笑んでそう言った。
ひとまずは納得してくれたようなのでほっと胸を撫で下ろす。
「わかってくれてよかったよ。そうだ、セラ。お前の部屋を別邸から本宮殿に移す準備をしないとな。つまらない意地からあんな場所に住まわせて悪かった」
「私は別邸でも十分でしたよ?」
「いや、すぐに準備をさせる。アメリアが本宮殿にいて、お前が別邸にいるという状況はどう考えても歪つだ」
その歪つな状況をこれまで許して来たのはほかでもない俺自身なのだが、今は一刻でも早くどうにかしたかった。
セラは曖昧にうなずく。
セラの肩の光の玉はどう見ても暴れてこちらを威嚇しているように見えたが、そんなことはどうでもよかった。
セラの頭を軽く撫でてから立ち上がる。早く部屋を移す準備を始めなければならない。
「エリオット様は、今も私のことを見てはくれないんですね……」
部屋を出ようと扉に手をかけたら、後ろから消え入りそうな声が聞こえてきた。俺は振り返って尋ねる。
「……どういう意味だ?」
「いえ、なんでもありません。お心遣い痛み入ります」
セラは笑ってそう言った。
しかし表情は笑っていても、その顔はちっとも嬉しそうには見えなかった。