後輩が転生してきた推しだと言われましても

五話 何もしないって言ったのに

(ど・う・し・て・こ・う・な・っ・た・!?)

 ベッドの上に結衣は横たわり、類が上から覆いかぶさっている。類は結衣の両手首をがっちりと掴んだままで、結衣は身動きが取れない。



 ——数時間前。

 居酒屋で結衣に洗いざらい喋ってスッキリした類は、気をよくしたのかお酒を次々に飲んでいく。

(いやいやいやいやいや、待ちなさい、そんなに急ピッチで飲んだらまずいでしょ!)

「ね、そんなに飲んだらやばくない?佐伯君、お酒強いの?」
「いくらでも飲めますし、飲んでもあまり変わらないって言われますね」

 確かに、あまり変化は見られない。まぁ本人が大丈夫と言うのであれば、それを信じるしかない。そう思って、結衣はお酒を飲まずにつまみをパクパクと食べていたのだが。

(いや、突然寝ちゃうとか、一番ダメなやつ!おい!)

 結衣の目の前で、類は机に突っ伏している。

「佐伯君、ねぇ、佐伯君てば!起きてよ!会計して帰るよ?起きてくれないならこのまま置いてくよ?」
「う、置いてくとか、結衣さん、ひどく、ないすか……」

 机に突っ伏している類の体を揺すりながら覗き込むと、顔を上げて辛そうに呟く類。突然さらっと下の名前を呼ばれた挙句、推しの顔がすぐ目の前にあって、驚いて結衣は思わず立ち上がろうとした。
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