後輩が転生してきた推しだと言われましても
(いや、別に何かされるとは思ってないけど。ないけど、推しの……家?行っていいものなのかな?いやでもラブホは流石に無理でしょ、色んな意味でダメ、ダメだよ)

「……雨宿りさせてください」

 結衣が静かにため息をついてからそう言うと、類は静かに微笑んだ。



——そして数時間後。

「待って、なんでこうなってるの?何もしないって言ってたのに!」
「あんな顔されて本当に何もしない男がいると思ってるんですか?結衣さん、マジで危なっかしいな、俺以外の男に隙見せないでくださいね」

 両手首を掴まれベッドに組み敷かれている結衣が抗議すると、類は静かに笑みを浮かべている。

「佐伯君だから、信じてたのに……」
「俺は確かに佐伯類だけど、ルシエルでもあるって言っただろ。ルシエルは天候を操れるって小説やアニメで描かれてなかった?」

 類は静かに、低い声で結衣の耳元に囁く。類の急に口調が変わって、思わず結衣の心臓は跳ね上がった。アニメのルシエルと声は当然違うが、それでもかなり近いものがあり、それも結衣の心拍数を上げる要因の一つになっていた。

「まさか、あの豪雨、あなたの仕業なの?」

 確かにルシエルは天候も操れるキャラクターだ。あの豪雨を起こすことも簡単だろう。驚く結衣を、類は何かを堪えるような切羽詰まった表情で見下ろしていた。

「ねぇ、ずっと聞きたかったんだけど。類とルシエル、どっちが好きなの?」

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