後輩が転生してきた推しだと言われましても


 フッと目を開けると、目の前に推しの顔があった。

「おはようございます」

「っ!」

(ししししし心臓に悪い)

 思わずクルリと背を向けると、類は後ろから結衣に抱きつく。

「推しの顔が目の前にあってやばい、とか思った?」

 正解すぎてぐうの音も出ない。

「それで良いんですよ。ルシエルである俺も、類である俺も、どっちも結衣さんのこと絶対に離しませんから」

 驚いて結衣が振り返ると、にっこりと妖艶に微笑む最愛の男の顔があった。

「え、これで終わりじゃないの?」
「は?」

 結衣の疑問に、類は腹の底から煮え繰り返ったようなドスのきいた声を出した。

「結衣さんにとってまさか俺って一夜限りの相手?そういうことできる人だったんですね」
「い、いや、そうじゃなくて、だって、佐伯君が私を好きだとは思えないし」
「はぁ?何言ってるの?好きじゃなきゃ抱かないから」
「へえっ?!」

 顔を真っ赤にして驚く結衣を、類は呆れた顔で見つめる。
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