後輩が転生してきた推しだと言われましても
 類が移動して来てから数日が経った。
 結衣は類のイケメン具合に緊張しつつ、あれこれと教えて業務を滞りなくこなしていた。そもそも佐伯も出来がいいのだろう、業務内容をすぐに理解してあっという間に馴染んでいる。

 ただ、女性社員の熱い視線が苦手なようで、無駄に話しかけてくる女性社員にはかなりの塩対応だ。そんな態度に女性社員たちは悲しそうにしたり不満そうにしているが、結衣はそんな類を見て心の中で密かに喜んでいた。

(いやぁ、女嫌いで塩対応ってところもルシエル様そっくりなのよね。こんなにイケメンなのに勿体無い気もするけど……これはこれで色々大変なんだろうな)

 そんなことを考えながら女性社員へそっけない態度を取る類をじっと見つめていると、その視線に気付いたのだろう、類が結衣を見て眉間に皺を寄せた。

「なんですか?」

(おお、こわっ!でもそんなところもルシエル様っぽくて逆にやばいって思っちゃう私が、多分一番やばい)

 そんなこと思ってるなんて口が裂けても言えないので、結衣は苦笑いをしながら口を開く。

「いや、いつも大変そうだなって思って」
「はぁ、まあ。いつものことなんで。……佐々木さんはああいう感じじゃないですよね」

 急に自分のことを言われて結衣はキョトンとする。

「へ?ああ、だって仕事だもん。佐伯君は後輩であり仕事上のパートナーみたいなものでしょ。そもそも、仕事に余計な感情は必要ないと思ってるから」

 あっけらかんとしていう結衣を見て、類は驚いた顔をした。そして、急に笑い出す。

「ふっ、ハハッ、そうっすね。確かに。佐々木さんがそうだから、俺、仕事しやすいです」

 いつもはほとんど真顔で無表情なのに、急に笑顔になった類を見て結衣は心臓が一気に跳ね上がった。 

(う、わ……!やばい、いつもは真顔なイケメンの笑顔の破壊力やばい!っ、でも、佐伯君は私が態度を変えないことを心地よく思ってくれてるんだから、これからもそのままでいるべきよね)

「そ、っか。それならよかった」

 バクバクと鳴り止まない心臓を誤魔化しながら、結衣はいつも通りの笑顔を類へ向けた。



 
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