後輩が転生してきた推しだと言われましても
「それがきっかけで、走馬灯のようにルシエルとしての記憶が蘇ったんです。俺は、別の世界でルシエルとして生きていた。それは間違いのないことで、でもこの世界ではそれがゲームになっている。しかも、キャラクターの性格がところどころ微妙に違うんです。
 色々と調べたんですが、そもそも俺が生きていた世界ではヒロインもいないし、起こる出来事もそもそも世界が違うので同じではない。どういうことかわからなくて、あのイベントに行けばもっと何かわかるんじゃないかと思ったんですけど、いざ行くとなると足踏みしてしまって」

 だからあの場所で佇んでいたのか、と結衣は類の話を聞いてなんとなく納得してしまった。

「な、るほどね。なんとなくわかった。信じれるかどうかは別として、いや、でもあの炎を見せられたら、信じざるを得ないというか……でもまだちょっと混乱してる、ごめん」

 両手を頬に添えて結衣はほうっとため息をついた。類の話が本当であれば、類はルシエル本人ということになる。だけど、ゲームのキャラが生まれ変わるなんてことあり得ない。あり得ないはずなのに、あの炎が出せるということは、やっぱりルシエル本人なのだ。

(いや、待って、つまり、つまりよ?目の前にいるのは、私の推しってこと?)

 重要なことに気がついて、結衣は類を凝視する。ルシエルと似ていてすごい、なんて次元の話ではなかった。推しそのものが、目の前にいるのだ。

 急に結衣の身体中の血液という血液が全て激流にのまれたように流れ出す。心臓がバクバクと大きく動き、今にも口から出そうになる。そして、結衣の顔がどんどん真っ赤になっていくのを、類は両目を見開きながら見つめていた。

(待って、嘘、無理無理無理、そんな見つめないで!推し本人とか!無理だから!)

 結衣は両手で顔を覆うが、首から耳まで真っ赤になっている。そんな結衣を見て、類はごくり、と喉を鳴らした。
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