居候が恋に落ちるまで【新作】
大学卒業後、あまりに早く仕事を辞めた私は、実家に戻ってフリーター生活を送っていた。

そんな中、たまたま家庭教師のバイトを始めたところ、これが意外にも合っており、口コミで人気に火がつき、一般的な家庭教師のバイトの5倍以上の時給を戴けるまでに。

下手な水商売よりも稼ぎがよく、1日3時間程度の労働でも月収は60万を超えたので、ずっとこんな風に暮らしてゆけたらいいのにと思っていた。

しかし、そんな生活も、私が30代後半になり、急に危うくなってしまったのだ。

あるお宅で女の子の指導をしていたところ、そこの母親から、

「先生、育児のご経験は?」

唐突に尋ねられ、

「いえ、子供は居りません」

「お子さんいらっしゃらないの?その歳なら当然、ご結婚はなさってるでしょう?」

不躾な人だなと思いつつも、

「独身です」
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