夜空に月光を。
ードンっ

鈍い音が響いた

ああ、やっと死ねた

そう、思ったのに、

「はあ、はあ、っぶねえ、」

私は、誰かの腕の中で、まだ命の燈を燃やし続けていた

「おいっ!死にたいのかよ!」

声の主の方を見ると、肩で必死に息をして私の目を見つめていた

「っ、うい?」

どうして、私の名前を…

そう思って、記憶の中を探したけど、私の中に目の前で見つめてくる彼はいなかった

「えっと、誰です、、」

「俺だよ!すい!結城 翠!」

聞いたこともなかった

「えっ、と」

私がわけもわからず、ポカンとしていると、彼は焦ったように頭の後ろを掻きながら言った

「あっ、ごめん、人違いだったわ
も、元カノのゆ、ゆいがさ、俺に振られた腹いせに死のう…
って!死のうと、してたよな?あんた」

うい、じゃなくて、ゆい、だったんだ

次から次に言葉が出てきて、面白い人だなって思った

「そうだけど…」

「なんでだよ」

明らかに、怒っているのが伝わってくる

その怒りが伝染して、私の中にも何故かふつふつと怒りが湧き上がってくる感覚が分かった

「別にっ、別にあんたに関係ないでしょ!私が、生きようが死のうが、私の勝手でしょ!」

私は、彼に思うがままに言葉を投げつけた

彼からも何か言葉が返ってくると思っていたから

でも、彼は何も言わなかった

いくらなんでも、知らない、初対面の人に向かって言いすぎた、?

急に不安になって、彼の顔を見ると…すごく悲しそうな顔をしていた

な、なんで、あんたがそんな悲しそうな顔すんのよ、

「ちょっとついて来い」

彼はそう言うと、私の手首を掴んで立ち上がった

私も引っ張られて、立つ

「俺は、あんたに生きてて欲しいけど」

彼はそう言って歩き出した

もちろん手首を掴まれたままの私は、何が起こるのかもわからずに引きずられるように彼についていった
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