モテ男でインキュバスな彼は魅了の力を無くしたい
思わぬ噂
オウマ君に生気を与え、意図せず魔法が発動した翌日。学校に向かう途中、そのオウマ君を見つけた。
こうして登校中にバッタリ会うのなんて初めてだ。
「おはよう。いつもと登校時間違わない?」
「ああ。昨日の今日だから、少し心配になったんだ。生気を吸われたせいで、体調が悪いっけことはないか?」
「私の様子を聞きにきたの? 平気だよ。もうバッチリ回復してるって」
昨日寝るくらいまでは疲労感が残っていたけど、今朝起きたらすっかり元通り。
だけどオウマ君がやって来たのは、それだけが理由じゃなかった。
「それに、その……昨日、エイダ達とあんなことがあっただろ」
「ああ……」
生気を吸いとられたり魔法が暴走したりしたことで頭がいっぱいになっていたけど、私がエイダさん達に呼び出されたのだって、つい昨日の出来事だ。
あの時はオウマ君が間に入ってくれたおかげでなんとか退散させることができたけど、もしまた同じような事があったらと考えると、やっぱり少し不安になる。
それだけに、彼がこうして気遣ってくれるのは嬉しかった。
「ありがとうね」
「言っただろ。何かあったら守るって」
自分で言って恥ずかしくなったのか、顔を赤くするオウマ君。だけど、ファンの子が聞いたら昇天してしまいそうな言葉だ。私だって一瞬ドキッとしたよ。
「でもそれなら、私達が一緒にいたら、余計に嫉妬されて危ないんじゃないかな?」
「うっ、確かに」
考えすぎかもしれないけど、昨日の一件を思うと、その辺りも用心しておいた方がよさそう。
「ごめん。念のため、学校には別々に行った方がいいよな」
まあ、そうなるかな。
けどね。わざわざ心配してやってきたオウマ君をそう言って追い返すのは、なんだか悪い気がした。
「うーん。まあ、一緒に登校するくらいはいいか」
「大丈夫なのか? もしもまた昨日みたいなことがあったら……」
「エイダさん達にはどのみち目をつけられてるし、他の子は、私達を見ても特別仲がいいなんて思わないでしょ。変に勘ぐられたら、たまたま会ったって言えばいいんだよ」
本当は、全く不安がないと言えば嘘になる。
だけど、せっかく来てくれたオウマ君を追い返すのは、もっと嫌だった。
「というわけで、そろそろ行こうか」
「そうだな」
こうして私達は、揃って学校へと向かうけど、そこで待っていたのは想像を遥かに上回る事態だった。
ハッキリ異変を感じたのは、教室に一歩入った瞬間だった。中にいる大勢の人の目が、一斉に私達に釘付けになる。
いや、本当はもっと前から、微かな視線のようなものは感じていた。だけどそれは、いつものようにオウマ君に集まっているものだろうと思って、気にしないことにしていた。
だけど今感じている視線は、明らかにオウマ君だけじゃなく、なぜか私にまで注がれていた。耳をすませば、「あの人がアルスターさん?」なんて、完全に私のことを話す声も聞こえてくる。
オウマ君も、すぐにこの異変に気づいたみたい。お互い顔を見合わせるけど、私達が言葉を交わすより早く、声をかけてくる人物がいた。パティだ。
「シアン、聞いたよ!」
「な、なにを?」
私は何も聞いてないんだけど。
訳がわからず混乱するけど、パティは私とオウマ君を交互に見ながら言った。
「シアンとオウマ君が、つきあってるんじゃないかって噂!」
「はあっ!?」
つきあってる?
どこかに行くの? なんてボケをやっている場合じゃない。パティの言ってるのは、もちろん男女が仲良くなった結果としての『つきあう』だよね。
いったいなぜ!?
「違う違う違う! 私とオウマ君がつきあうなんて、そんなの絶対絶対ぜーったい、あり得ないから! ねえ、そうでしょ!」
「あ、ああ……そうだな」
オウマ君は、私以上にショックだったのかも。明らかに顔色が悪くなってるよ。
いったいどうしてそんなことになっているのか。パティに聞こうとしたけど、その前に一度教室を見渡す。
誰もが興味津々といった様子で盗み聞きを、いや、もはや隠す様子も無いくらい、ハッキリこっちに注目していた。
「とりあえず、場所変えよう。言わなきゃいけないこと、たくさんあるから」
パティの腕を掴み教室から連れだすと、オウマ君もそれに続こうとする。
「俺も一緒に行っていいか?」
オウマ君も、もちろん気になるよね。だけど、それはまずい。
「オウマ君まで一緒にいたら、落ち着いて話もできないでしょ。後で全部話すから、オウマ君はみんなの誤解といてて。多分、私が言うよりも話を聞いてくれるでしょ」
もっとも、それにしたってどこまで効果があるかわからないけどね。
とにかく、オウマ君を教室に残して、パティと一緒に人気のない近くの廊下の隅へと移動していった。
こうして登校中にバッタリ会うのなんて初めてだ。
「おはよう。いつもと登校時間違わない?」
「ああ。昨日の今日だから、少し心配になったんだ。生気を吸われたせいで、体調が悪いっけことはないか?」
「私の様子を聞きにきたの? 平気だよ。もうバッチリ回復してるって」
昨日寝るくらいまでは疲労感が残っていたけど、今朝起きたらすっかり元通り。
だけどオウマ君がやって来たのは、それだけが理由じゃなかった。
「それに、その……昨日、エイダ達とあんなことがあっただろ」
「ああ……」
生気を吸いとられたり魔法が暴走したりしたことで頭がいっぱいになっていたけど、私がエイダさん達に呼び出されたのだって、つい昨日の出来事だ。
あの時はオウマ君が間に入ってくれたおかげでなんとか退散させることができたけど、もしまた同じような事があったらと考えると、やっぱり少し不安になる。
それだけに、彼がこうして気遣ってくれるのは嬉しかった。
「ありがとうね」
「言っただろ。何かあったら守るって」
自分で言って恥ずかしくなったのか、顔を赤くするオウマ君。だけど、ファンの子が聞いたら昇天してしまいそうな言葉だ。私だって一瞬ドキッとしたよ。
「でもそれなら、私達が一緒にいたら、余計に嫉妬されて危ないんじゃないかな?」
「うっ、確かに」
考えすぎかもしれないけど、昨日の一件を思うと、その辺りも用心しておいた方がよさそう。
「ごめん。念のため、学校には別々に行った方がいいよな」
まあ、そうなるかな。
けどね。わざわざ心配してやってきたオウマ君をそう言って追い返すのは、なんだか悪い気がした。
「うーん。まあ、一緒に登校するくらいはいいか」
「大丈夫なのか? もしもまた昨日みたいなことがあったら……」
「エイダさん達にはどのみち目をつけられてるし、他の子は、私達を見ても特別仲がいいなんて思わないでしょ。変に勘ぐられたら、たまたま会ったって言えばいいんだよ」
本当は、全く不安がないと言えば嘘になる。
だけど、せっかく来てくれたオウマ君を追い返すのは、もっと嫌だった。
「というわけで、そろそろ行こうか」
「そうだな」
こうして私達は、揃って学校へと向かうけど、そこで待っていたのは想像を遥かに上回る事態だった。
ハッキリ異変を感じたのは、教室に一歩入った瞬間だった。中にいる大勢の人の目が、一斉に私達に釘付けになる。
いや、本当はもっと前から、微かな視線のようなものは感じていた。だけどそれは、いつものようにオウマ君に集まっているものだろうと思って、気にしないことにしていた。
だけど今感じている視線は、明らかにオウマ君だけじゃなく、なぜか私にまで注がれていた。耳をすませば、「あの人がアルスターさん?」なんて、完全に私のことを話す声も聞こえてくる。
オウマ君も、すぐにこの異変に気づいたみたい。お互い顔を見合わせるけど、私達が言葉を交わすより早く、声をかけてくる人物がいた。パティだ。
「シアン、聞いたよ!」
「な、なにを?」
私は何も聞いてないんだけど。
訳がわからず混乱するけど、パティは私とオウマ君を交互に見ながら言った。
「シアンとオウマ君が、つきあってるんじゃないかって噂!」
「はあっ!?」
つきあってる?
どこかに行くの? なんてボケをやっている場合じゃない。パティの言ってるのは、もちろん男女が仲良くなった結果としての『つきあう』だよね。
いったいなぜ!?
「違う違う違う! 私とオウマ君がつきあうなんて、そんなの絶対絶対ぜーったい、あり得ないから! ねえ、そうでしょ!」
「あ、ああ……そうだな」
オウマ君は、私以上にショックだったのかも。明らかに顔色が悪くなってるよ。
いったいどうしてそんなことになっているのか。パティに聞こうとしたけど、その前に一度教室を見渡す。
誰もが興味津々といった様子で盗み聞きを、いや、もはや隠す様子も無いくらい、ハッキリこっちに注目していた。
「とりあえず、場所変えよう。言わなきゃいけないこと、たくさんあるから」
パティの腕を掴み教室から連れだすと、オウマ君もそれに続こうとする。
「俺も一緒に行っていいか?」
オウマ君も、もちろん気になるよね。だけど、それはまずい。
「オウマ君まで一緒にいたら、落ち着いて話もできないでしょ。後で全部話すから、オウマ君はみんなの誤解といてて。多分、私が言うよりも話を聞いてくれるでしょ」
もっとも、それにしたってどこまで効果があるかわからないけどね。
とにかく、オウマ君を教室に残して、パティと一緒に人気のない近くの廊下の隅へと移動していった。