キヌコさん、これからも よろしくね

いいんじゃない

 キヌコさんが仕事を終え東田の部屋を出て行ってから数時間後、東田本人が帰宅した。
 東田は部屋を見渡すと満足した表情を浮かべテーブルの上に置かれた焼き鮭を見つめた。
 「ん? これは何だ?」とテーブルに置かれたノートを手に取った。
 『連絡ノート』と記された一冊のノート。東田がページを開くとそこには達筆な字で、

 東田様
 初めまして、ニコニコ家事代行サービスのキヌコと申します。年齢は六十三歳です。
 今日から東田様の担当になりました宜しくお願い致します。
 ご要望の、ごはんとお味噌汁、そして焼き魚です。
 お味噌汁の濃いさとかご希望があればお教えください。
 あと、今後はこのノートにご要望や訪問時に行う
家事内容を詳しく記載していただくと助かります。
 読まれたらお手数ですがサインか印鑑を押してください。
 次回は、来週の月曜日にお伺い致します。 キヌコ
 と書かれてあった。

 東田は、鍋に作ってある味噌汁を温めお椀に入れ、
ごはんを茶碗によそうとテーブルに座り食べ始めた。
 「この、味噌汁、旨いな」東田が呟いた。
 食事を終えた、東田は『連絡ノート』を開くと何やら記入をした。
 そして……、
「キヌコさん。六十三歳、いいんじゃない」と微笑んだ。
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