キヌコさん、これからも よろしくね
どういうことなのかな?
「え……君、誰?」
突然帰宅して来た契約者の東田。
「私、キヌコです……」とキヌコさんが答えた。
首元には赤いベーズリー柄のバンダナを巻いて
胸元には、小さなにこちゃんマークの
ロゴ入りの薄桃色の襟なしトレーナー、その下には黒い
スラックス姿のキヌコ。
床に置かれた大きなトートバックとその中に入れられた身分証明書。
しかし……何かが違う。
「キヌコさん、いくつ?」東田が尋ねた。
「六十三歳……」とキヌコさんが呟く。
「違うよね?」と呆れ顔の東田。
「その、すみません、二十四歳です……」
「二十四歳! 同じ年じゃん」と驚く東田。
「いったいこれは、どういうことなのかな?」
と質問する東田。
東田の前にいるキヌコさん、髪の毛はショートカットのサラサラ髪の彼女が理由を話し出した。
東田から質問されたキヌコさんはその理由を話し出した。
「すみません、まず年齢なんですが以前、実年齢を表記していた同僚が契約者様と
トラブルがあったり、単身赴任の方の場合、奥様が心配されたりするもので、
実年齢よりうんと年上の年齢を表記させていただいています。
そのほうが契約者様も安心されるので。そして、名前なんですがハンドルネーム的な?
源氏名的な? コートネーム的な?
そんな感じで……」
「だから、キヌコ、六十三歳ね……」
と東田が言った。
「はい……」と答えるキヌコさん。
キヌコさんは話を続ける。
「それで、ご自宅を訪問する道中は、会社の決まりで
年相応の容姿にするようにと……」
「だから、ウイッグにそのバンダナにあのスニーカー
なんだ、でも何で?」
「私共の会社は、契約者様がご不在の時にご自宅に上がらせていただくため
怪しまれないようにと。だって、若い女性が男性宅に出入りしてたら色々と面倒にことになりますので」
「だから、その、不自然なメークなんだ」
と東田が言った。
「おわかりいただけて嬉しいです」
「でも、キヌコさんの会社、スタッフのほとんどが六十代って紹介欄に書いてあったけど、あれ、嘘?」
「あれは、本当です。その私を含む数名がその、二十代、三十代がいてほとんどが正真正銘、
現役バリバリの六十代です」
「そうなんだ」と東田は納得し頷いた。
「あのう~、このこと会社には」と心配そうな表情で
キヌコさんが聞いた。
「言わないよ。俺も契約時間内に帰って来ちゃったわけだからね」
と言うと東田は優しく微笑んだ。
キヌコさんから本当のことを聞かされた東田はふと我に返ると、
「あのさ……その、俺の寝室に入ったんだよね?」
「はい、掃除で……」
「俺の、下着……その、パンツ洗濯してたよね?」
「はい、干してました」
「パンツの柄知ってるんだよね?」
「はい、ほとんど……というか全部」
「俺の趣味とか、その他もろもろ」
「はい、趣味のものとかその他もろもろも片付けたりしてました」
「はぁ~そうだよね……」
と大きな溜息をついて天井を見上げた東田。
「あの~、私、お仕事ですから大丈夫ですよ」キヌコさんが言った。
キヌコさんを見た東田は、
「確かに俺、私キヌコ 六十三歳ですって言われても何にも疑わなかったし。
だってさ、キヌコさんの作る料理、物凄く美味しくてさ実家の母さんの味に似てたから味噌汁の出汁だって
うまく取れてるし、豚汁も最高だし、
鮭の焼き加減、皮のパリパリ感も最高だった。
煮物も、だし巻き卵も本当に美味しいから、
まさかキヌコさんがこんなに若いなんて思わなかったけど。
とにかく、キヌコさんにはこのまま俺の担当続けてほしいな」と言った。
それを聞いたキヌコさん、「ありがとうございます」
と満面の笑みを浮かべた。
突然帰宅して来た契約者の東田。
「私、キヌコです……」とキヌコさんが答えた。
首元には赤いベーズリー柄のバンダナを巻いて
胸元には、小さなにこちゃんマークの
ロゴ入りの薄桃色の襟なしトレーナー、その下には黒い
スラックス姿のキヌコ。
床に置かれた大きなトートバックとその中に入れられた身分証明書。
しかし……何かが違う。
「キヌコさん、いくつ?」東田が尋ねた。
「六十三歳……」とキヌコさんが呟く。
「違うよね?」と呆れ顔の東田。
「その、すみません、二十四歳です……」
「二十四歳! 同じ年じゃん」と驚く東田。
「いったいこれは、どういうことなのかな?」
と質問する東田。
東田の前にいるキヌコさん、髪の毛はショートカットのサラサラ髪の彼女が理由を話し出した。
東田から質問されたキヌコさんはその理由を話し出した。
「すみません、まず年齢なんですが以前、実年齢を表記していた同僚が契約者様と
トラブルがあったり、単身赴任の方の場合、奥様が心配されたりするもので、
実年齢よりうんと年上の年齢を表記させていただいています。
そのほうが契約者様も安心されるので。そして、名前なんですがハンドルネーム的な?
源氏名的な? コートネーム的な?
そんな感じで……」
「だから、キヌコ、六十三歳ね……」
と東田が言った。
「はい……」と答えるキヌコさん。
キヌコさんは話を続ける。
「それで、ご自宅を訪問する道中は、会社の決まりで
年相応の容姿にするようにと……」
「だから、ウイッグにそのバンダナにあのスニーカー
なんだ、でも何で?」
「私共の会社は、契約者様がご不在の時にご自宅に上がらせていただくため
怪しまれないようにと。だって、若い女性が男性宅に出入りしてたら色々と面倒にことになりますので」
「だから、その、不自然なメークなんだ」
と東田が言った。
「おわかりいただけて嬉しいです」
「でも、キヌコさんの会社、スタッフのほとんどが六十代って紹介欄に書いてあったけど、あれ、嘘?」
「あれは、本当です。その私を含む数名がその、二十代、三十代がいてほとんどが正真正銘、
現役バリバリの六十代です」
「そうなんだ」と東田は納得し頷いた。
「あのう~、このこと会社には」と心配そうな表情で
キヌコさんが聞いた。
「言わないよ。俺も契約時間内に帰って来ちゃったわけだからね」
と言うと東田は優しく微笑んだ。
キヌコさんから本当のことを聞かされた東田はふと我に返ると、
「あのさ……その、俺の寝室に入ったんだよね?」
「はい、掃除で……」
「俺の、下着……その、パンツ洗濯してたよね?」
「はい、干してました」
「パンツの柄知ってるんだよね?」
「はい、ほとんど……というか全部」
「俺の趣味とか、その他もろもろ」
「はい、趣味のものとかその他もろもろも片付けたりしてました」
「はぁ~そうだよね……」
と大きな溜息をついて天井を見上げた東田。
「あの~、私、お仕事ですから大丈夫ですよ」キヌコさんが言った。
キヌコさんを見た東田は、
「確かに俺、私キヌコ 六十三歳ですって言われても何にも疑わなかったし。
だってさ、キヌコさんの作る料理、物凄く美味しくてさ実家の母さんの味に似てたから味噌汁の出汁だって
うまく取れてるし、豚汁も最高だし、
鮭の焼き加減、皮のパリパリ感も最高だった。
煮物も、だし巻き卵も本当に美味しいから、
まさかキヌコさんがこんなに若いなんて思わなかったけど。
とにかく、キヌコさんにはこのまま俺の担当続けてほしいな」と言った。
それを聞いたキヌコさん、「ありがとうございます」
と満面の笑みを浮かべた。