苦手な上司と契約結婚したら、予想外の甘やかされ生活が始まりました【極上男子の執着愛①】

「あら、リリアン。今日はあなたなのね」

　仕事部屋に鍵をかけていると、同僚の女官リュクレースが戻ってきた。彼女の仕事部屋は、私のすぐ隣。

「えぇ、まぁね。リュクレースは？」
「私？　今日の私は侍女たちとの打ち合わせよ。ほら、王女殿下の婚姻の……」
「あぁ、そういえば、そうね」

　今度この国の王女殿下が他国に嫁がれる。まだ一年以上の猶予があるとはいっても、王族の輿入れともなれば数年前から準備をするのが常。リュクレースはそれに駆り出されているらしい。

「お輿入れする際に連れて行く侍女と女官を選ばなくちゃ」

　リュクレースが肩をすくめてそう言う。

　その言葉をぽかんと聞いていたものの、私はハッとして「ごめんなさい」という。

「もう、行かなくちゃ」
「あぁ、そうだったわ。王妃殿下は多少の遅れはお気になさらないけれど、立場的に何度も……は、無理だものね」
「うん、そうよ。……じゃあ、リュクレース。また後で」

　私はそう言って彼女に手を振る。彼女もまた、私に手を振り返してくれた。