今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
 腰に両手をあて、ラウニはぷんすかと怒ってみせる。
「いや……ラウニなら、絶対に来てくれると……思っていた。だから、ここで待っていた……」
 そう言われてしまえば、ラウニは何も言えない。恥ずかしさとか嬉しさとか、それでも彼のことが心配で、さまざまな感情が入り乱れてどうしたらいいかがわからない。
「……すぐに薬をもらってきます」
 それを誤魔化すようにして部屋を飛び出した。
 医務室に行き、毒のある魔獣に噛まれたときの治療薬をもらう。本来であれば、怪我をした本人が足を運ぶべきなのだが、その怪我をした者がオリベルで、代理できたとラウニが伝えれば医務官も納得する。
 オリベル本人が負傷した事実は、こっそりとしておきたい。とにかく、ラウニが責任をもって薬を預かり、オリベルへ飲ませると医務官と約束する。むしろ、誓約書のようなものを書かされた。
 薬はときとして毒となる。そういったこともあり、この医務官はいつ、誰に、どれだけ、なんのために薬を渡したかを記録しているのだ。
 医務官から薬の注意点を確認したラウニは、急いでオリベルの執務室へと戻る。
 形だけのノックをして、すぐさま奥の部屋へと向かった。
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