今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
 だが、オリベルはされるがままだった。
「はい、オリベル団長。終わりました。こちら、新しいシャツです」
「ありがとう」
 それでもオリベルは着替えにくそうだった。ラウニが手を出すと、オリベルは驚いたように目を見開いた。
「オリベル団長。一人でできないときは、私を頼ってください。私だって、事務官なんですから」
「だが、事務官の仕事に俺の着替えの手伝いは入っていないだろう?」
「そう……かもしれないですけど? ですが、今さらですよね」
 他の事務官も、ラウニがオリベルを起こして、身支度を整えさせ、朝ご飯を食べさせ、仕事をさせているというのを知っている。
 むしろ、あのオリベルを扱いこなせるのはラウニしかいないのでは? と言われているくらいだ。
 ただでさえ、他の事務官たちは近づきたくない第五騎士団。
 そのなかでも、ラウニだけはどの騎士団に対しても平等に接していた。と、周囲からはそう見えるのだ。
 ラウニにとっては第五騎士団が贔屓の騎士団なのだが、他の事務官がまったく第五騎士団を気にとめないため、ラウニが贔屓して平等になるという扱いを受けている。
 とにかく事務官は、騎士らの補佐をするのが仕事。広義に解釈すれば、オリベルの着替えも事務官の仕事ととらえても問題ないのだが、それを大々的に認めてしまうと、第一騎士団に所属する彼らの貞操が危ぶまれる。
「細かいことは気にせずに、お休みください」
 ラウニはもう一度横になるようにと、オリベルを促した。

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