今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
 ようするに、第五騎士団の連中と親しくなる時間があるのなら、その時間を第一から第四騎士団の面々とお近づきになる時間にあてたいと思うらしい。
 さらにその中でも第一騎士団は花形の近衛騎士隊。だから第一騎士団の仕事が入れば、皆が我こそはと名乗りをあげる。
 そのため下っ端事務官のラウニには、この第五騎士団への仕事がいつも回ってくるのだ。
 しかしラウニは、第五騎士団の執務室に来るのが一番の楽しみでもあった。
 なぜなら団長がオリベルだからだ。彼は孤児であったものの、子どものいないニッカネ商会の会長夫妻の養子として引き取られた。
 ニッカネ商会長は跡継ぎにと思ってオリベルを引き取ったらしいのだが、彼を引き取ってから三年後に子宝に恵まれた。
 その結果、オリベルは騎士を目指したとも聞いている。彼は年の離れた弟とも良好な関係を築いているとか。
 そんなオリベルは二十四歳という若さで第五騎士団の団長の座についた。
 現在は団長になって二年目。短く切り揃えてある黒髪と、夜空のような紺色の瞳が印象的な男性だ。もちろん、騎士団の団長に相応しく身体は鍛えられていて背も高く、小柄なラウニはいつも見上げるようにして彼に話しかけていた。
 ラウニだって騎士団の事務官として務めているため、男爵令嬢という貴族の端くれである。
 それでも生まれた時はただの商人の娘であった。
 父親が商才に長け、一代で財を築き上げたことによって、ラウニが十五歳のときに父親が男爵位を授かった。つまり、ラウニはなんちゃって男爵令嬢なのだ。貴族と名乗り始めてやっと四年。それでもまだ慣れない。
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