今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
 すっかりと寝入ってしまったし、あの部屋は暗かった。となれば、間違いなく外も暗いはず。太陽はすっかりと沈んでしまったにちがいない。
「ああ、そうだな。八時くらいだ」
「え?」
 なんという時間まであそこで休んでしまったのだろうか。
「ごめんなさい。こんな時間までここにいては、ご迷惑ですよね」
「……いや? 逆におまえがいてくれないと、俺は困る……おまえにそばにいてほしい……」
 トクンと胸が震えた。
 このような時間帯となれば、屯所にいるような者も数少ない。見回りの騎士か、仕事の終わらない者か。
 しんと静まり返った執務室。ラウニがオリベルを見上げれば、彼の紺色の瞳と目が合った。
「今夜は帰すつもりはない……」
 密室に男と女が二人きり。まして相手は思いを寄せる男性。となれば、ラウニだってほのかな劣情を期待してしまう。
 オリベルの顔が近づいてきた。トクントクンと心臓が早鐘を打つ。
 だが、そこで彼は顔を逸らす。その視線の先には――。
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