今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
 この執務室にはもう一つ部屋が設けられている。それは、寝泊まりするための部屋で、寝台も置かれ、さらには浴室や厠所までもが備え付けてある。
 ラウニはその隣の部屋へと続く扉にじっと視線を向けた。
「くっ……、んっ……」
 その部屋から、どこか苦しそうな声が聞こえてきた。やはりオリベルはこの部屋にいるようだ。
「ふぅ……、うぅ……」
 ラウニは焦った。さぁっと身体中から血の気が引いたような気分になる。
(オリベル団長……。苦しんでいらっしゃる?)
 具合が悪いのだろうか、それとも大きな怪我をしているのだろうか。嫌な想像がラウニの脳内を襲う。
 オリベルのもとに向かおうと隣の部屋へと続く扉に手をのばすが、やはりいきなり開けるのは失礼だろう。
 ノックをして、声をかける。
「オリベル団長。ラウニです。ご無事ですか?」
 それでも返事はなく、中から漏れてくるのは彼の苦しそうな声だけ。きっと苦しすぎて返事もできないのだ。
 ラウニは、ゴクリと喉を鳴らしてから扉を開ける。
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