今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
「着替えたほうがよさそうですね」
 そう声をかけたラウニは、てきぱきと動き始める。
 オリベルがこのような状態だからって心配するだけでは何も始まらない。少しでも彼の負担を減らすような策を考えなければ。
 桶に冷たい水をいれ、大きな手巾を浸した。それから着替えのシャツを用意する。
 ラウニがこの部屋を訪れたのは、今が初めてではない。
 オリベルがここに泊まった日の朝、彼を起こし、着替えさせ、朝食の用意をして、「仕事してください!」と喝を入れることが、月に一度から二度ほどあるからだ。
「お水、飲まれますか?」
 これだけ汗をかいているのだから、まずは水分を取るのが先だろう。
「ああ、頼む……喉がからからで……」
 そう言ったオリベルの声は、掠れていた。いったい、どのくらいの間、彼はこうやって苦しんでいたのだろうか。
 水差しからグラスへ冷たい水を注ぐ。彼の身体を支えるようにして起こすと、布越しだというのに熱が伝わってきた。
「どうぞ」
「すまない……」
 これほど弱ったオリベルを目にしたことなど、今まで一度もない。
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