今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
 いつだって彼は先頭に立ち、第五騎士団の面々を率いていた。
 今日だって、敷地内に入り込んだはぐれ魔獣を率先して討伐してくれたのが、オリベルなのだ。
 魔獣がいるこの国では、第五騎士団が魔獣討伐を行っている。
 魔獣とは、人にはない力をもつ獣で、口から火を吐いたり、氷の玉を投げつけてきたりして凶暴性がある。人の生活を脅かすのが魔獣という存在なのだ。
 魔獣は臆病で用心深く群れるため、人が集まって生活している場には姿を現さない。人のいない街道を移動するときなどは、気をつけなければならないが、そういった場合は護衛を伴うのが圧倒的に多い。
 そんな魔獣であっても、群れからはぐれて人の生活圏に入り込んでしまう場合がある。
 孤独な魔獣は、目に入るものすべてを敵とみなし、攻撃しながらも逃げていく。そういった魔獣をはぐれ魔獣と呼んでいるのだが、そのはぐれ魔獣が騎士団屯所の敷地内に入り込んできた。
 人が出入りする門などには騎士を配置させるものの、この魔獣は外壁を飛び越えてきた。さらに人の目が届かないような、木々の合間をすり抜けて、屯所の近くまでやってきたのだ。
 太くて短いしっかりとした四肢、後ろ脚で立ち上がれば人の背丈をゆうに超えるだろう。全身が毛で覆われ、鋭い爪と牙を備えもつ魔獣だった。炎を吐いたり氷の玉を投げつけたりはしないものの、その鋭い爪と牙で人を襲い、さらにそれには人にとって毒となる成分が含まれている。
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