今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
 そして運悪く、その場にいたのはラウニだ。ちょうど洗濯メイドから騎士らの着替えを受け取り、それを各人に配ろうとしていたところだった。
 事務官の仕事は、騎士たちの訓練や任務の補助であるため、彼らに必要なものを確認し、補充するのもそのうちの一つ。
 先に悲鳴をあげたのは、洗濯メイドである。その声に臆病な魔獣は怯んだものの、なぜかラウニ向かって突進してきた。
 驚いたラウニは、綺麗になった洗濯物でつい頭を覆い、身を低くした。くるべき衝撃に備えて、恐怖のあまりに目を瞑る。
 だが、いくら待ってもそれがやってこない。
 恐る恐る目を開けると、目の前には魔獣と対峙しているオリベルの背があった。
『オリベル団長!』
『ラウニ、怪我はないか?』
 魔獣に向けている剣を両手でしっかりと握りしめているオリベルは、ラウニを気遣ってくれた。
『バサラ事務官。こちらへ!』
 オリベルが魔獣を相手している間に、ラウニと洗濯メイドを安全な場所へと誘導してくれたのは、第五騎士団副団長のガイルだった。
『ここは我々に任せてください。それよりも、お怪我はありませんか?』
 先ほどオリベルにも確認されたばかりだ。
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