極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
静かな車内はいつものことで、私はぼうっと窓の外を眺める。
住宅地を抜け、広い土地に出る。
その奥に、私が住む屋敷がある。
「お嬢様、気をつけて降車してください」
差し伸べてきた御影の手を取って、私は車から降りる。
そしてまた、あの重苦しい雰囲気の屋敷の中へ入るのだ。
❁
「お嬢様、入浴を済ませられましたら次は自学のお時間です」
ボディーガードのくせに、こうして毎日執事ヅラをするのにはもう慣れた。
「ふんっ。言わなくても分かってるわよ」
「少々ご機嫌斜めですね……紅茶を淹れてまいります」
そして、私の機嫌取りが上手いところにもイラッとくる。
御影が私の部屋を出ていった後、私は勉強机には向かわずにベッドにダイブした。
そのまま今日の疲れが一気に襲ってきて、睡魔に呑まれ私は気を失うようにして眠りについた。
「……お嬢様? お嬢様、起きてください。……はあ、これは完全に眠っているな」