極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
ある夢を見た。
その夢の中には御影が出てきて、眠っている私に口づけするというハナシ。
───ちゅ。
大きな空間に、唇と唇が合わさる音が小さく響く。
「お嬢様、今夜もお守り致します」
すやすやと眠っている桃菜にキスをした御影は、少し冷淡な微笑を浮かべてそう言った。
❁
翌朝。
ミラー越しに自分を見ると、首筋に赤い跡があった。
これ、なんだろう……虫にでも刺されたのかな。
「ねえ御影。これ、なんだと思う?」
近くに佇んでいた御影に訊ねる。
「ん、なんでしょうか。虫刺されではないですか?」
いつもならここで慌てて絆創膏でも貼ってくれそうなのに、御影は微動だにせず私に向かって微笑んでいる。
それに少し違和感を覚えた私は、自分で絆創膏を貼ろうと救急箱に手を伸ばすけれど───
「お嬢様、早く支度をしないと学校に遅刻してしまいます」
私の手を制して、そう言った御影。