極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する


綺麗な漆黒の瞳が私を映している。


「でも、絆創膏貼らないと……」

「お嬢様」


有無を言わさぬ厳しい表情の御影に、私は一瞬怯んでしまう。

普段こんな表情をしない御影が今日に限って様子が変なものだから、私は御影に従って学校の支度を始めた。


「今朝の朝食は一流のシェフが調理されたビーフシチューでございます。食後のデザートもご用意しておりますので、必要であればお申し付けください」


御影が恭しくお辞儀して何度も聞いてきた言葉を並べた。


「……いただきます」


聞き飽きたけれど、それに文句を言う気力もなく私は無言で食べ始める。


「御影、今日の予定は?」

「本日のご予定は、学校が終わったらすぐにバイオリンのレッスンが入っております。その後は家庭教師がいらっしゃいますので、夜までお勉強ということになります」


「……そう。分かったわ。ありがとう」

「……、少し元気がないですね。昨日の疲れがまだ残っているのでしょうか」


眉を下げた御影が心配そうに私の顔色をうかがう。

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