極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
「大丈夫よ。ただ、ちょっと疲れてるだけ」
本当に、お嬢様というのは息苦しい───。
❁
私が唯一無理をしないで居られる時間。
それは、南高校で過ごすひと時だ。
「桃菜、おっはよー!」
朝イチ、私の机に来て後ろから抱きしめてきた茉奈に私は挨拶を返す。
「おはよう、茉奈」
今日も元気はつらつな彼女に緊張の糸がほぐれ、頬が緩む。
「ん、てか桃菜。その首、どうしたの?」
茉奈にそう訊かれて、私はどう答えたら良いものかと悩む。
「んー、それが分からないんだよね。寝て起きたら、赤くなってて」
「それ、キスマークじゃん!!」
声を張り上げて言った茉奈。
そのワードにびっくりして私はとっさに茉奈の口元を押さえた。
「き、キスマークって……?」
周りをうかがいながら声を落として訊く。