極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
「え、桃菜。もしかしてキスマークを知らないの?」
茉奈も私と同じように声を落として訊く。
その声には信じられないという思いが込められているように聞こえた。
「え、うん」
私は少し戸惑いながら茉奈を見つめる。
すると、茉奈が私の耳元でこそっと説明してくれた。
それを聞いた私は赤面して───
「……っ、てことは、誰かが私の首筋にキスしたってこと?」
「正確には、キスして吸ったが正しいけどね」
「ま、茉奈! なんてハレンチな……っ」
私は両頬を覆って羞恥にもだえる。
「でも、一体誰が……」
「そうね、問題はそこよ。桃菜、誰か心当たりがある人はいないの? あ、もしかして私には内緒で彼氏がいるとか!?」
私はふるふると首を横に振って否定する。
だけど、思い当たる人物なんて一人しかいない。
──御影。
私が眠っている間、ずっと警護にあたる人。