極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
間者の密告状
明らかに何かがおかしかった。
御影の深刻そうな顔もそうだけど、学校でのあの不気味な感じ。
何かが自分の身に迫ってきているような、そんな気持ち悪さを含んでいる。
「桃菜、どうした? 今日なんか元気ないけど」
私の机に頬杖をついた茉奈にそう言われて、私ははっとする。
やば、表情に出てた……?
「そ、そんなことないよ。元気元気!」
「ほんとかなあ? その笑顔も空元気ですーって感じだけど」
今自分が抱えている不安を話したほうがいいのだろうか。
でもそうしたら茉奈に心配をかけてしまう。
だけどこれ以上大事な友達に嘘をつくのははばかられて、私は恐る恐る呟いた。
「実は……ね。最近不穏な空気を感じるの」
「……、というと?」
「赤髪の男にぶつかられて舌打ちされたり、フードかぶった男がすれ違い際ににやっと笑ったり……」
私がぽつぽつと打ち明けると、茉奈の表情がだんだんと暗くなっていく。
そして私をまっすぐに見つめて口を開いた。