極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する


少し不安に思って辺りに視線を巡らせた時。


「───っ!!」


突然背後から真っ黒な被り物を頭に被せられ、拘束された。


口元を強く押さえられているせいで声も発せない。

それに息苦しい。


私は目を見開いて必死に拘束から解放されようともがくけれど、私を拘束する人の力には到底敵わず、身動きがとれない。


強く体を引かれ、目は見えないけれど車の中に押し入れられたのが分かる。


体は恐怖で震え、叫び出したいのにできないのがもどかしい。


「よし、出せ」


すぐ近くで低い声がした。

冷たい響きをはらんだ声に、ぞっと鳥肌が立ってしまう。


そして私は恐怖心から気を失ってしまった。


 ❁


次に目が覚めた時、私は手足を拘束された状態で冷たい床の上に横たわっていた。

口元にはテープのようなものが貼られていて、声を発することができない。

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