極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
「ここに呼び出された理由、分かる?」
この男は、私が答えられないと知って訊いてきているのか。
そう思うと無性に腹が立って、私のすぐ近くでしゃがんだ男を強く睨む。
それでも男は余裕そうな笑みを浮かべ、私を嘲笑した。
「あ、ごめんごめん。ガムテ外してなかったね」
微笑を浮かべた男の長細い手が私の顔に伸びてくる。
優しい声音とは反対にベリッと強く剥がされて、口元がヒリヒリと痛い。
「……っはあ! あんた、なんなの!? これって拉致だよね、でも何のために!?」
これまで溜め込んでいた気持ちを思いのままにぶつける。
手足は拘束されたままで、私は必死に首を動かしてその男を見上げた。
すると顎にひやりと冷たい感触がして、私の顔はぐっと上に持ち上げられた。
「お嬢さん、血気盛んだね」
男の冷たい手が私の顎下に添えられ、上から見下される形になる。
私を小馬鹿にしたようなその言葉に、頭にカッと血がのぼる。