極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
「お嬢さんがおれに何かしてくれたら、ここに連れてきた理由教えてあげてもいいかなあ」
その言葉に、背筋がぞっと粟立つ。
「……っ、何かって、なによ」
唇がふるふると震える。
情けないけれど、私はこの状況に結構参っていた。
怖いくらいに美しい男の顔が私に近づいてきた時。
どこかかからバァン!!と壁を突き破るような大きな音が聞こえてきた。
私はその音にはっとして振り返る。
そこには───
「───お嬢様!!!」
「……っ、御影、」
私の目に涙の膜が張る。
一気に訪れた安堵感と不注意な自分に対するやるせなさが押し寄せて、心をぐちゃぐちゃにする。
「お前、お嬢様に何をした」
御影が私をかばうように立ち、雅という男を睨みつける。
雅はゆっくりと立ち上がり、余裕そうな笑みを浮かべて言った。