極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する


「お宅のお嬢さんと少し遊んでいただけですよ」


違う。そうじゃない。

私は拉致されて、この男に散々小馬鹿にされて、屈辱を受けた。


「……本当はここで始末したいところですが、今日のところはやめておきます。──だが、次はないと思え」


こんなに怒っている御影を初めて見た。

そして、いつ何時も敬語で人に接していた御影が乱暴な口調になっているのも。


「お嬢様、行きましょう。痛かったでしょう、すぐに駆けつけることができず申し訳ありません」


御影が顔を歪めながら私の手足にかけられていた手錠を外す。

鍵なしで軽々と手錠を外せる御影はやっぱり凄い。


こんな状況の中冷静な頭でそう思う。


ぐったりとしていた私は御影に抱きかかえられて、日の当たる外に出た。

ずっと暗い所にいたせいか、太陽の強い西日に目が眩む。


「……御影、助けてくれてありがとう」


意識もうろうの中、私は心からの感謝を伝える。

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