極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する


「御影、今日だけさ。御影が私の家庭教師になってくれてもいいんだよ?」


最初はほんのいたずら心でそう言ったけれど、御影はそれを真面目に受け取ったのか「では、今夜は私が家庭教師になりますね」と笑顔で頷いた。


ボディーガードとは、人を危ないものから守る職。

それなのに御影はその例を逸し、執事としての才能や勉学の才能まであることを知り、私は目を丸くする。


「御影、勉強もできたんだね……」

「……お嬢様、引かれてます?」

「うん」


私が深く頷くと、御影は苦笑いを浮かべた。

そして私に数学を教えてくれる。


「ここは──」


御影の顔が私の顔のすぐ近くにくる。

頬と頬が触れそうなほどに近くて、私はたかが御影相手に緊張してしまった。


「お嬢様、聞いておられますか?」


シャーペンを握る手に力が入る。

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