極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
御影が私をまっすぐに見つめてそう問いかける。
透き通るほどに綺麗な茶色の瞳が私をとらえて離さない。
「き、聞いてる!」
「ふふっ、そうですか。なら、続けますね」
御影はきっと私が緊張していたことに気づいている。
楽しげな瞳が私を映し、長細い綺麗な手が私の手にこつんと触れた。
たったそれだけのことで御影を意識してしまう自分がいやでいやでたまらなかった。
「御影、ちょっと近い」
「そうですか? 普通の距離感だと思いますが」
御影は唇の片端を上げて、上機嫌に私をからかう。
「御影、勉強教えてくれるはずでしょ。早く教えてよ」
「もとはと言えばお嬢様が集中できていなかったことが原因なのですが……」
「うるさい黙って」
私は御影の口を閉じさせ、勉強机に向かった。