極悪人は仮面越しのまま彼女を溺愛する
「桃菜お嬢様、お気をつけていってらっしゃいませ」
二人の執事が恭しくお辞儀をしながら、重厚な扉を開ける。
「うん、ありがとう。行ってくるわね!」
私が大きな屋敷を出ると、玄関前に一台の黒塗りの車が止まっていた。
そして一人の男がその車のドアを開ける。
「桃菜お嬢様、それでは学校に向かいましょう」
にこりと笑みを浮かべるその男は、御影秀。
執事よりも有能な、私のボディーガードだ。
「……御影、あんた、なんで」
私は御影を置いて屋敷を出たはずだ。それなのになぜ、御影が先に外にいるんだろう。
「桃菜お嬢様、忘れてしまわれましたか? 私は、SSランクのボディーガードなのですよ?」
……ああ、そうだった。
目の前で余裕な笑みを浮かべるこの男は、日本ボディーガード大学を首席で卒業した男だった。
私が幼い頃からずっと一緒にいる御影は、私の唯一無二のボディーガード。
今も昔も、その事実だけは変わらない。
「……ふんっ。ほら、早く行くわよ。遅刻したらただじゃおかないからね!」
不覚にも御影に感心してしまったことを隠すために、私はかわいくない態度で車に乗り込んだ。