執着魔法使いの美味しい求愛
「ティルサ様、こちらが庭園ですの」
 喋り方も、魔宝石店に訪れる貴族様を思い出させる。
 バーバラによって案内された庭園は、入り口に花のアーチがあり二人を迎えてくれる。一歩踏み入れると、緑と赤と黄色の混じった花々が咲き誇っていた。
「素敵な庭園ですね」
 客商売をしていた経験から、当たり障りのない会話をするのは苦手ではない。
 だが、今の言葉はティルサの社交辞令ではなく、本音であった。
 綺麗に手入れされた庭園は、花を愛でている人の心をうつす。特に、東側の一画が気になった。それを口にすると、バーバラは口元を緩めた。
「そこは、わたくしが手入れしているのです」
 これがきっかけとなり、庭園をゆっくりと歩きながら、バーバラと他愛のない言葉を交わす。
 白い小さな噴水の前で、その噴水を眺めるようにして二人は立ち止まる。
 ふとバーバラの顔が強張った。
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