執着魔法使いの美味しい求愛
 ティルサは両手をバーバラの前に出す。すると彼女は優しく両手を握りしめる。
「やはり。ティルサ様には魔力がありますよ」
 言いながら、バーバラは手を離した。
 さわりと風が吹き、咲いている花びらを撫でていく。その風にのって、花の甘い香りがティルサの鼻孔をくすぐった。
「ですが……」
 ティルサは魔法使いではない。何度もそう口にしているはずなのに。
「もしかしたら、ルトヘル様の魔力を注いでもらっているのですか? あ、そうであれば納得できます。もう一度、触れてもいいですか?」
 バーバラはティルサが答えるより先に、先ほどと同じように両手に触れてきた。
「あ、やはり……。ありがとうございます」
 彼女は腕を組んで、一人で勝手に納得している。
「ああ、だからか。なるほど。すごい、すごいです。さすがルトヘル様ですね」
 優しい風が吹きつけるが、バーバラは興奮冷めやらぬ様子。
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