執着魔法使いの美味しい求愛
　　　◇◆◇◆

　ティルサがいない。
　ルトヘルは喪失感に襲われていた。
　事の発端は昨日の夜だ。
　仕事から帰ってきたら、彼女は目を吊り上げてルトヘルを待っていた。
　――ルトヘル、話があるの。
　声色からして、彼女が怒っていることなどお見通しだった。だが、そんな彼女も可愛いと、安易に考えていた。
　――ルトヘルは、私が太ったのを気にしていたこと、知っていたよね？　知っていたにもかかわらず、私を太らせていたの？
　どこからか彼女は、ルトヘルの魔力によって太ってしまったという情報を仕入れてきたようだ。
　魔力を注ぐ行為について説明をしたが、彼女はルトヘルの言葉を信じようとはしなかった。挙句。
　――あなたは、胸の大きな女性が好きなのでしょう？　そうね、私は小さかったものね。
　そんなわけのわからない言いがかりまで口にする。
　魔力を注いだことによって彼女が太ってしまったこと。それは紛れもない事実であるため、ルトヘルは謝った。
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