執着魔法使いの美味しい求愛
 それでもティルサは、ぷりぷりと怒ったままだった。
 彼女はどこから情報を仕入れてきたのか。しかも誤った情報であり、誤った情報が正しいと信じ込んでいる。
 入手先は間違いなく、今日のお茶会だろう。だから、参加させたくなかったのだ。
 エリンがいるから大丈夫だと言っていたが、そのエリンはなぜかルトヘルの仕事場にいた。
『魔宝石の偽物が出回っているみたいなのよ。偽物というよりは、盗難品かしら?』
 まったくもう、と彼女はぶつぶつと文句を言っていた。
『今日の茶会は?』
 ルトヘルが尋ねると。
『無理に決まっているでしょう? ああ、ティルサのことが心配なのね。でも大丈夫よ。今日の主催はミクリナ公爵夫人だし、伯母様もいるしね』
 ルトヘルとしては、あの母親よりもまだエリンのほうを信用していた。
 何しろ彼女は、ルトヘルとは結婚したくないと思っている女性だからだ。だからこそ、ルトヘルがティルサと婚約したことを心から祝福してくれた。

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