執着魔法使いの美味しい求愛
第六章
 頭がずきずきと痛む。手足を動かすことができないのは、ロープで両手首と両足首を縛られているからだ。
 ティルサは今、暗い倉庫に閉じ込められていた。だが、倉庫といっても荷物はほとんど運び出され、残っているのは数個の木箱のみ。
 暗くても、ティルサはこの場所がどこであるかはわかっていた。
(なんで、こんなことになってしまったの?)
 ロープを解こうと手首や足首をもぞもぞと動かしてみるが、ぎっちりと縛られているのか、緩む様子はない。
 大きな布を噛ませられているため、くぐもった声しか出せない。
(ルトヘル……。ごめんなさい……)
 このような状況でも考えるのはルトヘルのことばかり。
 昨日、彼と喧嘩をした。
 喧嘩の原因は、ルトヘルがティルサに内緒にしていた『魔力』の件だ。
 ルトヘルが言うには、一年以上も前からティルサに魔力を注いでいたらしい。
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