執着魔法使いの美味しい求愛
 エリンの言葉に、「ない」とイリスは断定する。
「これは、私たち王宮魔法使いが押収した魔宝石になります」
「どこからだ?」
 温厚なイリスの目が、鋭くなった。
「申し訳ありません。機密情報ですので、詳しくは言えませんが。ただ、フレーテン商会の魔宝石が、裏のルートで出回っているようでして。鑑定書も偽物であったため、この魔宝石は盗難品だろうと」
 イリスは黙って目を伏せる。
「それは、間違いなくフレーテン商会で扱っていた魔宝石だ」
「このような物が裏ルートで出回る心当たりはありませんか?」
「ない……。いや……。最近、店舗を一つ閉めたんだ。ティルサも働いていたあの店舗だ」
「閉めた理由をお聞きしても?」
 エリンが尋ねた。
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