執着魔法使いの美味しい求愛
「ああ。単純に利益が見込めないからだ。あそこの従業員たちには、本店にうつってもらうことにした。今、ちょうど本店への引っ越しをしているんだ。しばらくはあそこを倉庫にしていたのだが、やっと本店の場所が整ったからね」
「ティルサがいない店舗で、その引っ越しを仕切っているのはどなたですか?」
 ルトヘルには気になっていることがあった。
 フレーテン商会から盗まれたと思われる魔宝石。
 ティルサが不在の中での店舗の引っ越し作業。
 あの店は、ティルサが小まめに足を運び、防犯魔法具によって護られていたから、安心できるようなところがあった。
 だが、引っ越しともなれば、防犯魔法具が警報を鳴らさないように切る必要がある。そして、ティルサは不在。
 魔宝石店を守っていた二つのものが一気になくなったとしたら――。

< 122 / 147 >

この作品をシェア

pagetop