執着魔法使いの美味しい求愛
ティルサの髪を引っ張っていた金髪の男が尋ねた。
「足がつかないように、他の国で売ってしまうのが手っ取り早いだろう? 今日の夜の荷車に乗せるんだ。それまで、おとなしくしていろよ、お嬢さん」
金髪の男が、乱暴に掴んでいたティルサの髪を放したため、ティルサはまた床の上に倒れ込んだ。
部屋から明かりが奪われたのは、また扉を閉ざされたからだ。
(ルトヘル……)
今の会話が全て真実であれば、ティルサはこれから荷車に乗せられ、山を越えた隣国へと売られてしまうようだ。
そうなってしまったら、トホテミ国に戻ってくることは難しいだろう。
閉鎖的なトホテミ国は、昔から近隣隣国との交流は盛んではない。排除しているわけではないが、必要最小限にとどめているのだ。
(ルトヘル、ごめんなさい……)
喧嘩をしたまま、彼と別れてしまったことが悔やまれる。
(バーバラ様もおっしゃっていたのに。好きな相手から魔力を注がれることは名誉なことだって。だけど、ルトヘルが凄いから、私が余計に惨めになるのよ……)
「足がつかないように、他の国で売ってしまうのが手っ取り早いだろう? 今日の夜の荷車に乗せるんだ。それまで、おとなしくしていろよ、お嬢さん」
金髪の男が、乱暴に掴んでいたティルサの髪を放したため、ティルサはまた床の上に倒れ込んだ。
部屋から明かりが奪われたのは、また扉を閉ざされたからだ。
(ルトヘル……)
今の会話が全て真実であれば、ティルサはこれから荷車に乗せられ、山を越えた隣国へと売られてしまうようだ。
そうなってしまったら、トホテミ国に戻ってくることは難しいだろう。
閉鎖的なトホテミ国は、昔から近隣隣国との交流は盛んではない。排除しているわけではないが、必要最小限にとどめているのだ。
(ルトヘル、ごめんなさい……)
喧嘩をしたまま、彼と別れてしまったことが悔やまれる。
(バーバラ様もおっしゃっていたのに。好きな相手から魔力を注がれることは名誉なことだって。だけど、ルトヘルが凄いから、私が余計に惨めになるのよ……)