執着魔法使いの美味しい求愛
「回復魔法だ。君の、自己治癒能力を高めた」
 ティルサは驚きで声が出なかった。ルトヘルがこのように魔法を使ったところを始めて目にした。
「ティルサ、立てるか? いや、こうしたほうがいいな」
 ルトヘルはティルサの身体を抱き上げた。
「ルトヘル……。重いからおろして。私、歩けるから」
「君は重くない。むしろ、軽いくらいだ。それに、オレがこうしていたい。君を手放したら、またいなくなりそうで怖いんだ」
 ルトヘルがティルサの胸の上あたりに顔を埋めた。
「ごめんなさい」
「あぁ、駄目だ。ティルサの匂いを嗅いだら、我慢ができなくなる。だけど、今はここから早く出なければ。ここは暗いし寒いだろう?」
 地下にある倉庫であるから、暗いのも寒いのも求められる機能上、仕方のないことだ。
「大丈夫、ルトヘルがあったかいから……」
 ティルサもルトヘルにしがみついた。
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