執着魔法使いの美味しい求愛
「とりあえず、戻ろう。そろそろ上も落ち着いた頃だから」
 ティルサにはその言葉の意味がわからなかったが、ルトヘルの体温を感じることができて、安堵する。
 地下から階段をあがり、店舗の方へと向かう。そこではローブ姿の幾人かがあれこれ指示を出していた。また、四肢を縛られ、床に転がっている者もいる。
「ティルサ。無事だったのね。よかった……」
 エリンが駆け寄り、ティルサを抱き締めた。だが、ルトヘルが彼女を抱きあげているため、ティルサはエリンと彼に挟まれた形になってしまう。
「エリン、苦しい……」
「オレもお前に触れられるのは、不本意だ」
「ルトヘルがティルサを離せばいいだけじゃないのよ」
 ぷっと頬を膨らませて、エリンはティルサから離れた。
「じゃ、ティルサは連れて帰るから、あとは頼んだ」
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