執着魔法使いの美味しい求愛
 防犯魔法具で店内は常に見張っているため、侵入者を検知したら民間の警備隊がかけつけると共に、すぐさま商会に連絡が入る仕組みになっている。
「でも、実際に君に似合う魔宝石が手に入った。オレの勘もあながち間違いではないだろう?」
「そうね」
「閉店間際に、君の仕事を増やして悪かったね」
「いいえ。今日の売り上げが伸びたから、私としては大喜びよ。もう少し、待っていてもらえるかしら?」
 ゴーン、と閉店の時刻を告げる鐘が鳴った。店舗の入り口には、『閉店』とカードをぶら下げ、しっかりと鍵をかける。
 それから、今日の売り上げを帳簿につけ、帳簿も鍵のかかる書棚へとしまった。
 その様子をルトヘルは黙って見ている。
 そんな彼の視線をティルサは感じていた。
 ティルサがルトヘルを意識し始めたのは、いつからだったろう。
 それは、ルトヘルが自分のことを「ボク」と言わなくなってからだ。理由を尋ねたら、「大人になったからね」と口にしていた。
 そこから急に彼が大人に見えて、憧れの存在となった。
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