執着魔法使いの美味しい求愛
 ルトヘルはティルサを彼女の部屋へと運んだ。ソファの上にぽすんと落とされた。
「慣れた部屋のほうが、落ち着くだろう? 本当はフレーテンの屋敷がいいかと思たんだけど、あそこは今、話を聞くために騎士団たちが入っているから、こっちのほうがいいと思ったんだ。イリスさんにも話はしてあるから」
「ありがとう」
「よかった。やっと君の声が聞けた。温かいお茶でも淹れるよ」
 ルトヘルからお茶の入ったカップを受け取り、それを一口飲むと、やっと生きた心地が戻ってきたように感じた。
「ルトヘル。私を見つけてくれて、ありがとう」
「ティルサがどこにいようが、オレにはすぐわかるよ」
 それが彼なりの励まし方なのだろう。今だって隣にいながらも、適度な距離を保ってくれている。
 ルトヘルの隣に自分のような人間は不釣り合いかもしれない。だけど、彼が好きという気持ちに変わりはない。むしろ、今までよりも大きくなってきている。
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